臨時列車
小川 葉

 
自転車を漕いでる
全速力で
ふみきりまで
息子を荷台にのせて
遠くから汽笛の音が聞こえる
蒸気機関車だ!

夢をみていた
眠りにつくまで
SLを夢みる
少年だったはずなのに
今はその少年の親になって
自転車を漕いでる

寝坊したのだ
臨時列車のD51が
ふみきりを通過するその時まで
少年の僕と
父親の僕が
息子をのせて自転車で
全速力で走る
蒸気をあげて走る

喜ぶ息子と
少年の僕と父親の僕の
笑顔と笑顔が
時を駆け抜けた
ついに僕らは見ることができたのだ
僕らの夢を
僕らは

同じくらいの
男の子と見ていた
同じくらいのお父さんに
今はどこですか
と聞くと

西暦2008年ですと
目を潤ませて
そう言った
 


自由詩 臨時列車 Copyright 小川 葉 2008-10-06 00:56:35
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