いなくなった
霜天
いなくなった
椅子が、あった
主は不在なのか、と尋ねられれば
沈黙して笑う、程度のことしか出来なかった
混ざり合った
分からなくなった
人は混ざってしまうもの、らしい
心の、底辺の垣根にぽちゃり、と沈み込むと
後はもう、どこにでもある景色、になった
19時10分の電車であなたたちは不在になる
そこまでの過程はどの説明書きにも書いていないので
おかえりなさいと、いってらっしゃいのどちらに属するべきか
私は、わたしは
いくつかのパターンの空を、着色しながら
見上げると、空を
いつの間にか雨はやんでいて
すっかりと混ざってしまった人たちも、乾き始めて
少しずつ、見通せるようになっている
可能性として
つかめるものなのだろうか
身動きの取れないドアから開放されて
深く吸い込んだ空気の透明さ
帰ろうとすると、押し出されて、落ちてしまうような世界で
おかえりなさい、あなたたち、と
繋げられるものなのだろうか
雨に打たれ走り出すと
景色とさえも混ざり合ってしまう
いつも誰かと一緒にいたはずなのに
繋げられるものなのだろうか
沈黙して笑う
程度のことで
いなくなった
その時までは
となりにいた
離れなかった
混ざり合ってしまえば少しは
分かり続けることが出来るだろうから
そういえばもう
冬が近い