人を殺した詩
doon

 ある日詩人が思いついた詩
 人が殺せてしまう詩
 初めは共感が詩の本質と思っていたらしい
 共感されれば良い
 作られた詩はネット上に投稿された

 3日後
 人が死んだ
 その詩によって心の支えがぷっつりと切れた人
 特定の人達だけを指した詩に
 非難半分 賞賛半分
 詩人はそれ以上結果を見ることも無くなった
 見れるわけも無い
 詩が表現の域にあるのだと誤解した人にとって
 詩の向いている矛先も分からないのだ

 ただ単語を連ねただけでも詩にはなる
 比喩の中にも 抽象の中にも
 詩人は何一つ鋭く尖った言葉を使えなくなった
 それは水
 一生波紋の立たない水のような詩だった
 綺麗ではある
 しかし、それだけだ
 皮肉に満ちた人生の鋭さも無い
 賛否さえいただけなくなる

 詩が書けなくなることも道理
 また
 過呼吸になり読むこともできなくなる
 それが詩ではないと訴えることもできない
 評価する人もどこかで詩人であり
 詩の姿に魅了され
 本当に詩が歩かねばならない道も見えないのでは
 生まれてきてしまった詩のほうがかわいそうである

 自然と詩人はペンを置いた
 ゴメンと言う詩をかいて
 あるいは誰かに言ったのか
 ネットには最後の詩だけが残った
 詩とは本来こうあるべきだと
 誰もが言った
 しかし詩人はもう書かない
 詩の本質の一つは
 己に帰ってくることである
 


自由詩 人を殺した詩 Copyright doon 2008-10-02 05:16:54
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