エレベーター
1486 106

その人が引っ越してきたのは3ヵ月前
いつもきちんとしたスーツを身に纏っている
隣の部屋に住んでいるせいか
毎朝のように顔を合わせる
その人があまりにも素敵だから
挨拶以上の言葉を交わせない
1階に下りるまでの数秒間
気付かれないように空想にふける

エレベーターの中に二人きり
近くて遠すぎるお互いの距離


表示階数をじっと見つめたり
わざと髪の毛をいじってみたり
気の無い素振りを演じ続けてる
大切な時間を壊さないために

バスの時間を一本早めた
理由をその人は知らないんだろう
隣の部屋に住んでいるのに
名前以外は何も分からない

エレベーターの中に二人きり
近くて遠すぎるお互いの距離


残業帰り深夜のマンション
偶然その人と一緒になった
その人は綺麗な化粧を纏った
恋人と仲良く手を繋いでいた

エレベーターの中の三人
私だけが仲間外れ

エレベーターの中の三人
私だけ下りる場所が違う


それからは何となく気まずくなって
バスの時間を一本遅くした
エレベーターの中で一人きり
叶わない恋のページを閉じた


自由詩 エレベーター Copyright 1486 106 2008-10-01 22:54:42
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