くじら
はな 


ほどなく
空は なだめるように
いくどかのまばたきをした
何度目かの夏
もうすぐ花柄の猫たちが
砂丘のほしに
帰ってゆく

波の音
水平にひろがる
君のこきゅうと 両腕
ほどけかけた
さんだるのひもをつかんだまま
つめたいどうろのうえで 雨がやんでゆくのを見つめた
水面のそばのように
まぶしい


つぎはぎのやわらかいくじらが横切り
ときおり てんめつし
まぶたより深いところで
風が最期にゆくほうを 指す
きみどりの丘
砂ばかりの、かわべり
そこに君は いなくても いい
意味が
なくなってもいい
ずっと その準備をしてきたのだから
行く先は
ひとつではない
いつか
ぼくではないなにかで 君が
みちて
ゆくように



星のすき間で とおい雨と 別れて
猫のあしあとは
もうない
たたみのうえでさかさまになって
君は
海の底の話しをする
ぼくは
かわいた空気を大きく吸い込み
てんじょうに 
果てなく
あざやかな 水平線を見る






自由詩 くじら Copyright はな  2008-10-01 22:40:52
notebook Home