曲馬団
佳代子

  
まるで橋を渡るように
月の町と日の町が
時の海の渦の中に
一つになって溶けていく
知らない町
知らない人の群れ
立体裁断の服の子らが
同じ顔くっつけ喜びはしゃぐ
人形のような老婆が
切符を切る
飴を売る
乾いた手が宙に舞う
蝶が舞う
境内飾るビロードの
赤い垂れ幕夢狂い
重なる連中鳩のよう
破れテントがはためく
女団長の黄色い声
獣の雄叫び ムチの音
口から蛇を出す蛇遣い女に
私は首をすくめた
手の中で飴は水になった

ピーポッポの回転木馬
ぎしぎし音立て回ってた
一重まぶたの町子ちゃん
桃色サテンのシナ服娘
   遠い記憶に
   帽子を被せ
静かに笑って 目を伏せる
赤い口紅 頬初めて
目尻に金粉 町子ちゃん
ブランコの上で 震えてた
私は両手で 耳を伏せ
唇噛みしめ 見つめてた
遅くまで外にいると人さらいに
人さらいに連れて行かれる
大人達の叫び声
それでも夢は見ていたい
春らんまんの テント小屋
赤い風吹く テント小屋

さあ 火の輪くぐれ  火の輪くぐれ
10m  高飛び  マシーン
玉乗り  逆立ち
人形  あやつり  人形
ブランコ  空中  ブランコ
   落ちると  ムチだ!
   落ちると  爆笑!
道化て  人形

ガラス玉転がる野っ原から
プラネタリウムの星雲へ
ロケットが飛んだと
私は小屋の女に告げる
水晶玉には赤
火の赤
今日は祭りだもの
占い女は足を組む
私は5歳
ひまわり畑は赤い川
きらら溶岩熱い都市
流れ流れてビル畑
私は5歳の眼持つ

青空塗りのおやじさん
あわてて雲を切っちまった
落ちたハサミは ほらロケット
ちぎれた雲は 羊になった 
ピーポッポが聞こえる
乾いた街路に張り付く人の影すり抜け
ピーポッポが聞こえる
砂の城は時の仮装
仮面のいたずら
流れる歴史の後ろ姿さ
  ほら 踊るよ  マリオネット
  祭り あやつる  マリオネット


自由詩 曲馬団 Copyright 佳代子 2004-07-29 23:28:20
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