生爪を剥いだ日
草野大悟

突然
写メールを送りつけてきて
おれの誕生祝いに
夫婦ふたりで
温泉に行くのだという。

ちょっと待てよと
息子としては思う。

おれの祝いなのに
なんで
昭和元年と
大正十四年が
ふたり仲良く
温泉旅行するのか
どうも合点がいかない。

だから
父ちゃんと
ふたりで
ゆっくりお湯につかって
ごちそう食べて
海を見てくるんだよ。

当然のように
昭和元年は
母ちゃんそのままに
きっぱりと断言する。
そばで
大正十四年のやつが
にこにこ
頷いている。

ふ〜ん
そう
ふ〜ん

おれは妙に納得して
なるほどなあ〜
と思う。

母ちゃんと父ちゃんが
ふたりで旅行するなど
おそらく
おれの知る限り
はじめてのことで、
確かに
母ちゃん的には
おれの誕生祝いなんだろうと
また、また妙に納得してしまう
生爪を剥いだ日


自由詩 生爪を剥いだ日 Copyright 草野大悟 2004-07-29 21:46:26
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