「 溺れる家。 」
PULL.







亀の行列が通りすぎるまでぼくの口はいつも開いている。

また押し入れの中の牛が泣いている眠れない明日は街に行く。



沼に沈めた家から真っ先に逃げ出してきた家具と旅に出る。
溺れる机が吐き出したドラえもんはぬらぬらと膜に包まれ。


砂糖細工のベッド紅茶に沈めぽろぽろと眠り夢に解け。

キッチンの片隅で寝息を立てる食材としてのあなたの罪。



冷凍庫の中で解凍されるのを待っているS・キング。

本棚はぼくを捨て旅に出る「わたしの旅はまだ書かれていない。」












           了。



短歌 「 溺れる家。 」 Copyright PULL. 2008-09-22 14:08:09
notebook Home 戻る