二十年前の事
砂木

弟とテレビをみていた
目の前にひろがっていたのは
銃を構える軍隊と対峙していた
花を構える国民だった

圧政のため起こった反乱で
政権をくつがえした力

睨みあったまま銃撃は起こらず
花を手に手に 高く掲げた男性達も
一歩もひかなかった

私は 花と共に銃を持っているのか
までは気がまわらず
花を持った人々の後ろに援護の銃があるかも
とも思わず
ひたすら銃と花をみていた

自国の民を守るのか 政権を守るのか
仕事か 命か

おとりや捨て身になる人々は
どうしているのだろう

訓練を受けている者も
前ぶれもなく穏やかな陽射しに咲いている者も
今だ 今こそ と

弟も何も言わずにみている
あそこで銃や花を構えているのが
この弟だったら
私も援護の銃を持つのだろうか

崩壊していく政権
でも小説や詩にはできないよね
政権を変えるような事は
人の行動力ってすごいよね

物書きの先輩が合評会で言った
軽く笑い流した後の
とれない苦みにひそかに
兵の列を乱して歩いた兵隊さんの話を
思い出した
たんぽぽの花を踏めずによけて歩いたら
後に続く兵隊さんも みんなよけて
たんぽぽは無事だったという話

銃と共に掲げられた花も
銃を持つ者に守られた花も
人と関係ないのに
すがられ なぐさみにされ
捨て忘れられて
それでもその花がなければ
人は心を保てなかった

詩と共に
銃を持つ事になるんだろうか
人として銃を

逃げろ、
と 神がささやく




ライク/あ、神への祈り
atsuchan69兄さんの返詩に感謝をこめて




自由詩 二十年前の事 Copyright 砂木 2008-09-21 10:29:46
notebook Home 戻る