濁流
伊月りさ

きみを覆いながら
明け方
恋は側溝であった
大木を根こそぐ竜巻の強さでわたしの右足を巻き込む
この浅さで溺れる

母に嘘をつき
父を裏切った
上睫毛と下睫毛を固く結んで拒んだ景色
目蓋を切り取って「見ろ」と
迫ったきみに
墜落した
瞳孔は光に焼かれ
どこまでも流されている
わたしは雨の終末であり泥の友人であり

過去が継ぎ目から染み出るのだ
それは臭かったのでわたしは喜んできみの三角形の鼻先に
すると
背中に一センチ四方の熱が八つ
首筋に歯形を残すために肉食動物になる
それは閉鎖的な幸福感
雨粒は肥大する
現実は速すぎてこれに気づかないので
わたしは喜ぶので
きみは目を細める


自由詩 濁流 Copyright 伊月りさ 2008-09-18 16:35:09
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落下光