空白


また
てのひらの上からこぼれた
また
確かめる前に
こわしてしまった

すこしのためらいを
みぎの目にのこしたまま
ときが 
ときがたつのを待っている

やがて 
いつものように ひが暮れて
新しい  がやってくる
途方もなくおおきくて
ひとり では
少しきびしい  が



+

雨のなか
深夜 ぬけだして
(どこへ) ぬけだして
(どこかで) 立っている
あのうしろすがたが
いまも 目にやきついている

てをつなぎたいのに
何をさしだせばいいのかわからないまま
ただ 雨にうたれるのが 好きだと そう思っていた



+

かたりかけることの
難しさについて
ずっとかたりあいたかった
遅くはないと 思ったころには
もう それはきのうのことで
なにひとつ 言葉にはできずに
なにひとつ の 
ひとつを ひたすら探してばかりいた



+

だれが
そこにいたのだろう
だれが
ここにいるのだろう

一瞬の沈黙が   
とめどなく成長を続けて
津波のように押し寄せる ゆうぐれを
今日もまた
ため息と一緒に 
飲みこんでしまう



+














+

いえなかった言葉を
もう一度 口ずさんで
きのうの空白へと 耳を傾けた

ぼくの中で
ゆうぐれはよるに変わり
どこまでも 広がり続けていく

窓の外にはただ
外の
メロディが
優しく鳴り響いて

その先を


*


知りたくはなかった







自由詩 空白 Copyright  2008-09-16 14:13:53
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