ずっと変わらない
唐草フウ


その夕方は
台所のテーブルに
向かい合って座り
母は
きんぴらにするために、ごぼうを
笹がきに削いでいた
わたしは、その灰汁で黒くなった指の先、手を
目の中に映し撮りながら
小窓から そよぐ風を
かんじて、みつめる


「えんぴつけずりみたいだねぇ」
「そうだねぇ」
「むかしはキレーイに研ぐのがすきで」
「赤と青が半分ずつの色鉛筆がほしくて、でもねだれなかったなぁ」

なんてなつかしい話をして
いつのまにか
削ぎおえた母と
しりとりをすることになった

しりとりは
わたしが小さい時からの
母との言葉のあやとり
ねむれないとき
いっしょに歩いてるとき
ひまさえあれば
しりとり

ことばを言いつくしたのか
それとも疲れてきたのか
双方すこしずつ遅い口になってきて
そんな雰囲気に 
わたしの足でリズムをとって持ちなおす
有名なクィーンのワンフレーズ
ドンドン、パンッ
ドンドン、パンッ
顔を合わせてなんだかおかしくなってくる
わらう


母がほめてくれた
昔よりわたしは単語をいっぱい知っていることを
だけど互角なたたかいで
やっぱり勝ちたくない気もする
ずっと
「しゅうりょう」のことばは
言いたくなくて
言わなかった


またしりとりしようね、といった



次の日わたしは
芋のつるを母と一緒に剥いた
その手を忘れずに
その手にいつかなっていく




自由詩 ずっと変わらない Copyright 唐草フウ 2008-09-16 06:04:28
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