詩人と海
アヅサ

生まれてすぐに言葉を食べた
降る雪のように冷たい言葉
それは小指の爪のように
やわらかく甘く
そっと僕の心臓に住まった


なんだか涙が出そうで
手のひらを握ったりしていた
つぼみが開きそうな夜に
草をついばんで眠った
海が見たいと歩き始めたのは
まぶしい朝がきてから


ひばりが鳴いて花が咲いた
揺らいでいると見えないもの
僕にはなにも見えなかった
世界には潮騒があふれていて
そのなかで神様も揺れる
僕は歩いている
海についたらそこで終わりだ


生まれたばかりだった僕は
言葉をつなぐことを覚えた
ざわざわの海で歌をつくる
すべてが透明な青色で
僕の涙も青かった
つぎに目を閉じたら最後、
僕の爪先からすこしずつ
海に沈んでいくみたいに
手放していけばいい



自由詩 詩人と海 Copyright アヅサ 2008-09-13 21:52:21
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