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餅月兎

無造作に投げ出された夕暮れの
狡猾な腕がきみの背中を突き飛ばす

孔雀がけたたましく笑い
スポーツ事務ではブルジョワどもが汗みずくになって肉体労働に勤しむ
彼らの心臓では無数のパラシュートが
優美なのか醜悪なのか曖昧な軌道を描いて着地しない

フォークを刺し込まれる事によって
自分のものでない事を改めて確認された体が
トボトボと工場を後にし
ずるずると ぬるぬると ドロドロと
襖一枚隔てた他人を起こさぬよう
寮のようなものに忍び込む

TVショウでは
歳とったしょぼくれた猫背の皇帝が林檎箱の演台の上
悲しいユーモアで三万人殺したという

賛成ですわ

爽やかな秋風の所為か
まごまごしていると
孫が三万人以上生まれてしまうのだが
どうするのか

だって気詰まりなんですもの

明日のパンが
特にきみの分が足りないという事なのだが
労働とは
そういうことなのだそうだ

セックスの摩擦熱で
火事が起こる

以上伝聞


自由詩 1 Copyright 餅月兎 2008-09-11 23:37:43
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