ピュア・トレード
ススメ


自動車の代わりに馬車が行き交い
アスファルトは荒い石畳で
街灯すらおぼろげな昔話の世界
その時代よりもずっと前から
取引は在り続けた
天秤にかけられるのは
いつも人の物だ
人の物ということにした物ともいう
それそのものは酷く純粋で
違うのは天秤が気まぐれになったことだけ
多くの人は自分も天秤の上にいることに気がつかない
だからその気まぐれに気づけない
ページをめくり声を発しても
それが私の声なのか
それとも本の声なのか
理解が出来ない年端でもあるまいし
そして多くの人は気づけない
そもそも取引なんてしなくてもいいことに
ほんのわずかばかりの
純粋なルールが存在しえた時代のために
律儀に透き通った貨幣の残響ために
人の心だけはまだ純度を保てているということなのか
ただ
親が子を助け
子が親を助け
お嫁さんをもらい
旦那さんに嫁ぐ
親を看取り
子を見送り
そして看取られ
そこで不純物を燃やし
風になり
海に流れ
空にのぼり
雪になって
また一緒に降りてくる
それが
幸せな結末
何も間違っていない
たとえそれすら
間違いなのだとしても
そんな世界で私はかまわないというのに


自由詩 ピュア・トレード Copyright ススメ 2008-09-02 21:48:22
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