俺が何を考えているかなんて誰もが知ってる
ホロウ・シカエルボク




俺が何を考えているかなんて誰もが知ってる
どんな本を流し読みして、どんなサイトにアクセスしてるか
どんな飯を食って、どんな茶を飲んでるか
愛想笑いの陰で何を考えているかなんてみんな知ってる
俺が本当は
あらゆる物事を憎んでいることを知ってる
大した物事は知らないことを知ってる
いつでも嗚咽をこらえていることを知ってる
いつでも何かに怯えていることを知ってる
知っていて知らないふりをしている
泳がせておいたほうが面白いから
時々適当におだてて
その気にさせておいたほうが面白いから
俺の瞳がちょっとずつ輝くのを見て
腹の底で舌を出して楽しんでるのさ
俺が何を考えているかなんて誰もが知ってる
俺が日記にどんな事を書いているか
誰の悪口を書き連ねているのかなんてこと誰もが知ってる
誰かがそんな風に仕組んでいるのさ
俺の本心は
透明度の高い湖のように丸見えだ
すべてを恐れていることを見破られるのが怖くて
気難し屋の振りをしていることもみんな見破られてる
やつらにはいつも
俺の膝は震えているように見えるのさ
俺が何を考えているかなんて誰もが知ってる
誰に淡い恋心を抱いていて
そいつがそばにいると内心で浮かれてたりすることもみんな知ってる
俺が無関心を装ってると分かっててこっそり笑ってる
俺がどんな性交をしてるかなんてみんな知ってる
どんなふうに触れて、どんなふうに終わるのかなんてみんな知ってる
俺が躍起になって
たくさんのものを隠してることをみんな知ってる
俺が笑っているのは
傷つけられたくないからさ
笑っているうちに
バランスが崩れてしまった
俺が笑いながら
困惑の彼方で迷っていることもみんな知ってる
俺のこと好きなんだろう、俺のこと好きなんだろう
俺のこと好きだって言って
俺が有頂天になるところが好きなんだろう
俺をその気にさせてくれる、みんなのことが大好きだよ
俺が本当はどんな気持ちでいるのかなんてみんなが知ってる
俺には言えないことがたくさんあることもみんな知ってる
隠したくないんだ、それは本当なんだ
隠したくないんだ、見世物になりたいんだ
本当は本心から
好かれたり哀れまれたりしたい
俺のことを知っていることを隠さないでおくれよ
道化よりは浮浪者になって落ちぶれたいよ
汚れた服を着ている俺がどんな気持ちでいるかなんてきっとみんなすぐに知ってしまうんだろう
俺のシャツをはぐったりしないで
あんたにはきっと
すべてが見えているんだろう
俺のブランケットを片付けたりしないでくれよ
そこに何があるかなんて見るまでもないんだろう
俺が何を考えているかなんて誰もが知ってる
俺が本当に
殺したいと思っているものがどんなものなのかも
楽しんでくれるかい、喜んでくれるかい
俺は丸裸だ
聖者の振りをした乞食だ
何も話せないから悟ったふりをしてる
イラついてる
震えている
傷ついてる
憎んでいる
恐れている
愛している
殺している
だから
なんだって言うんだ
だから
なんだって言うんだよ
俺は生きてる
俺はここにいる
そうしながら
そうしながら
どうにかして軌道を修正してる
知ってるだろう
知ってるんだろう
俺は面白いかい
ごらんよ





知ってるんだろう?




自由詩 俺が何を考えているかなんて誰もが知ってる Copyright ホロウ・シカエルボク 2008-08-29 00:39:09
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