ミズタマイザー
N哉

「陽子、青いものー」

起立したまま微動だにしない私の横を、先生の質問はスルーと窓から外、遥か校舎の上空へ。まだわからない。分散しやすい意識をひとつ捕まえてはひとつ逃す、わざと。鳥かごのようなもの、例えば呼吸。

「春」

教室が湧いた、私は静かに呼吸する、それ以降私は黙って突っ立ったまま、先生が吐き捨てた「座れ」が気に入らなかったからではない、ここからしか見えない男子生徒の早弁に感動したからでもない、道はある、しかし選ばない、それが私の着席を止めた。

『虹はどうだろう』

私の畦道を作る、見たこともない景色が広がる。例えば頑なに着席を拒む私を先生が殴り、視界が真っ赤に破裂する。例えば男子生徒は物を見るような目で倒れた私を見つめ、教室は辺から面、すべてを失う、誰ひとり表情を変えない、分かる、皆始めからそんな顔だった。

『青いものも、青い』

小鳥の名は小鳥、君を呼ぶ「なあ、君よ」。

呼吸、まず始めにそれをした、分散しやすい意識を掴まえる、例えばそれが呼吸。吸っては吐く、吸って吐く、鳥かごのようなもの。まだ騒がしい教室を抜け、畦道を歩く、やがて昇る朝日、照らされたすべての物が青い、私すら。


自由詩 ミズタマイザー Copyright N哉 2008-08-27 18:38:31
notebook Home 戻る  過去 未来