そと
因子

硝子張りの角の席で
ふたつ前の席の男の人の
袖にとまった蝿だけを見詰めている私は
硝子の向こうへ降り続く雨に
「  」、
溶けていきそうです

東京の薄暗い雑踏は
不意に割れ目から流れ出して
直角になれなかったかなしい端から
傾いだ灰色のしかくい角から
白くはじけていきそうなのに

美しく確かなこの街では
他のすべてを差し置いて
私が溶けていきそうです


自由詩 そと Copyright 因子 2008-08-25 18:36:44
notebook Home 戻る