パラレルファミリーフィティッシュ
秋也

君は父を求めている
僕は姉を求めている
君は僕から父性を取り
僕は君から姉を存分に受け取る
僕は君より年下だし
もちろん父ではない
君は僕より年上だが
本当の意味で姉にはなれない
当たり前のことだ
運命と欲望がずれてしまったなら
バッドエンドがみえていたとしても
運命に魅かれて
出会いを運命として
進めばよい
わからないところで欲しているならば
関係性でもぎ取ればよい
父が欲しかったんじゃない
姉に飢えていたわけでもない
僕たちの元には贈られなかった
あるところには普通にある
当たり前のものが欲しかった
父の
姉の
一部が泣くほどに
人生を傾けかけるほどに
ほしかった
僕から乖離された父性
君が随所にくれる本物以上に甘い姉弟関係
とっている時と貪っている時は
お互い背中を向け
隠して
パラレルな幸せを噛締めればいい
それは縦系列の時間を含む関係の中で
混ざって溶けているもの
「私はお父さんとキャッチボールがしたかった」
「僕はわからないけど、ただ姉が欲しかった」
僕らは望む形も
環境も血も違うのだから
家族にはなれない
それでもお互いが提供し
知らないところで奪い合っているものが
悪い結果を招こうとも
本物よりも本物であることを
切に願う
僕らになぜか届かなかったプレゼント
でも君には本当のお父さんが存命で
そして僕には求めていた性別は違うが優しく誇れる兄がいる
それでも満たされないことはしょうがない
ただ
当たり前のことが一番難しく
当たり前のことが一番納得しにくいことは
誰にとっても同じ
君がパラレルな父性をいくら求めようとも
僕がパラレルな姉との関係を渇望しようとも
当たり前からは逃げてはいけない
本当の君の父も同じ母を持つ僕の兄も
パラレルな君の父もパラレルな僕の姉も
そこから目をそらすなと
同じように叱ってくれるはずなのだから
時が満ちたようなら
いつか一回でいい
手をつないで少し散歩しよう
心の中にある
泣いて渇いてしまっているものが
ずいぶん満足するはず




自由詩 パラレルファミリーフィティッシュ Copyright 秋也 2008-08-22 03:00:25
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