おばあちゃん
うめバア


大好きだったおばあちゃん
死んじゃってから
もう何年にもなるけど
もっとたくさん話をしとけばよかったね。

印刷工場へ働きにいっていた頃のこと
226事件の日のこと
関東大震災のこと
大空襲の両国橋のこと

ねえ、
63年前の夏も
空は青くて高かったの?
蝉がジャンジャンないてたの?

朝ご飯の後で
おそうじしたり、洗濯したり
ラジオをつけてみたりしたの?

63年前の夏も
憤ったり、悔しがったり
うわさ話に声をひそめたり
意地になって炎天下を歩いたり
してたの?

祭りの夜の鮮やかな色
あめ玉、氷菓子、おまんじゅう
胸をうつほどあでやかな着物柄
泣き声、笑い声、誘い文句

カーキ色、軍服、空襲警報
疎開先の姑の嫌みったら
近所の旦那は名誉の戦死
戻ってきたのはヤシの実ひとつ

おじいちゃんは戦地から
こんぺいとう、持って帰ってきたってね
どんな色だったの?
甘かったの?
誰がねだって食べてしまったの?

古い話ばっかだ〜って言って
笑ってごめんね

あたしだんだん
おばあちゃんの歳に近づいていくよ

おばあちゃん、会いたいなあ




自由詩 おばあちゃん Copyright うめバア 2008-08-21 11:01:03
notebook Home 戻る  過去 未来