アウグストゥスの月を抱く
皆月 零胤

果てしない闇の中
なぐさめの月を抱く
その瞳に映す僕の罪は
笑うたび優しく刺さる抜けぬ棘

欲望は満たされることはなく
偽りのぬくもりは
終わったその瞬間から
この手の中から零れ
漆黒の涙となって天空へ還ってゆく

癒えぬ傷痕を指先でたどられると
終わらない悲しみに包まれて
遠い世界へと僕を運ぶけど
もうあの頃と同じものは何もない

瞼に浮んだあのひとは
目を開けると消えてしまい
僕は雲を切り裂き螺旋を描いて
地上に落ちて粉々になる

それでも今夜瞳を閉じて
この胸の空白の中
瑠璃色の灰を撒き散らして
曇った夜空の遥か彼方の世界で
アウグストゥスの月を抱く


自由詩 アウグストゥスの月を抱く Copyright 皆月 零胤 2008-08-20 17:17:11
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