小熊とわらし
小川 葉
家を
ぼだされだ
わらしが
わらしでなぐなるまで
泣ぐ声が聞ごえだど
おめは
山がらひろってきた
わらしだがら
ほれ、見れ
この柱さ傷がある
熊の爪あとが
オドは言ったど
なんとしても
この家さ
居でなだば
その熊たおしてこい
おめの
ほんとの親を
アバは泣いだど
そう言われで
家を
ぼだされだ
わらしが山で暮らして
熊のオドどアバを
さがしたど
おめは何しにきた
人のくせに
山さ
熊のオドは
そう言ってすぐに
自分の
わらしだど気づいで
泣いだど
ああ、この背中の
毛が黒くて綺麗なのは
アバさそっくりだ
熊のオドは言ったど
わらしは
熊のオドどアバど
暮らし始めだど
熊の家は
少し懐かしがったども
そごで生まれで
暮らした記憶はねがったど
ああ、
やっぱり
人の家さ帰りでなぁ
人の
オドどアバど暮らしで
気づいだら
わらしは
酒っこ飲んで
居眠りしてだ
熊のオドをたおしてだど
熊のアバも
悲しんで
泣いでらっけども
たおしてしまったど
人にもどりでくて
熊をたおして
そうしてわらしは
泣ぎながら
里さ
帰ってったど
オド、アバ、
熊のオドどアバどご
たおしてきたど
オド、アバ、
いねなだが
たすけでけれ
オドどアバが
小熊にたおされでる
わのごど
見るみでに目合わせで
小熊は山さ
帰ってったど
泣ぎながら
帰ってったど
わらしはやがて
大人になるど
人がら熊さ
変わってったど
あの山でも
大人になって
人になってしまった
小熊がさびしぐ
ひとり
暮らしてるんだべなっていう
そういう
は、な、し