敬虔な生き物
るるりら

なにひとつ 同じでいることのできない私が
潮に洗われている
洗われているのは 海なのか 私なのか 

あなたの口ったら おさかなみたいに うごいて
「ほら みてごらん海蛍だよ」と、教えてくれた。

潮は遠浅
満月の海
しずかに掬えば
砂金みたいな生き物が
夜を洗いながら
輝いている

その わたしがしらない生き物は
はじめは ちらちらと鉱物のようだったけれど
生き物らしく 群れ つどい
わたしの輪郭が ぷよぷよとぼやけ
わたしが 海なのか 海がわからなくなったころには
わたしとともに居た


星が流れた
雲が流れた
私が流れた


潮は遠浅
満天の星
しずかに掬えば
砂金みたいな海が
夜を洗いながら
輝いている

なにひとつ 同じでいることのできない私なのなら 
いっそ 海蛍になりたい
砂みたいに ちいさくとも 
海を洗うような敬虔な生き物になりたい
そして、こんなふうに
あなたの話が聴けるなら

わたしは
いつだって自由だ


自由詩 敬虔な生き物 Copyright るるりら 2008-08-10 18:03:17
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