蝿と白百合 
服部 剛

美しい花にそっぽを向かれると 
ぼくは自らが蝿だと気づきます 

柔らかい蕾に包まれて 
花の囁きを聞く日を
ずっと夢見ながら 
周りを飛んでは見るが 
こちらに微笑む気配は 
いっこうにアリマセン 

ただあきらめるのも情けなく 
あきらめないのも女々しいね 

美しい花にそっぽを向かれたまんまでも 
かみさまはいつも黙って 
蝿の小さい心臓をぎゅうっとしめつける 

それでも蝿は蝿として蝿なりに 
低い空を飛ばねばならぬ 

人知れぬ涙の粒を土に落として 
悔しさと切なさと寂しさと 
自らの裂けたこころをつらぬいて 
震える無心の羽ではばたきます 

目の前に茫漠と広がる 
まっさおな空へ
吸いこまれる 
小さい独りの黒点です 








自由詩 蝿と白百合  Copyright 服部 剛 2008-08-10 05:13:16
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