やぶ蚊3匹雲の中
あおば

             01/08/18


昨晩生まれたやぶ蚊3匹
夏枯れの貧しい藪をあとにする
やぶ蚊3匹霧の中
やぶ蚊3匹腹空いた
やぶ蚊3匹血を探し
初めて味わう朝7時
身軽な朝陽は木に登り
陰気な霧を退治する
ひまわりの花は輝いて
青空ますます高くなる

空に張られた電力線
プーンと唸る電力線
やぶ蚊3匹戸惑った
唸りの音に邪魔されて
帰りの路を見失い
ぷーんと羽音を立てたまま
隠れるところも見つからず
電柱の横に佇んで
3匹ペシャリと叩かれて
血だらけのまま落下する
やぶ蚊3匹虫の息
なんにも言えずに息絶えて
痒みの記憶が弔った

やぶ蚊3匹土の上
やぶ蚊3匹引きずられ
光りの届かぬ穴の内
曲がりくねった回廊を
働き蟻に運ばれて
問答無用で処理された
なんにも言えずに処理された

やぶ蚊3匹夢を見る
朝日に輝く雲の峰
3匹並んで飛び越えた
ぷーん、ぷーん、ぷん
やぶ蚊3匹息を飲む
真ん丸虹が出迎えた





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自由詩 やぶ蚊3匹雲の中 Copyright あおば 2008-08-08 22:36:45
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