Brassica
嘉村奈緒

 
雷が ガリガリと鳴って
コップを グニグニと 洗ったので
菜の花を 見に行ったのだった
ねえ 菜の花を 見たこと ある
たくさんの 菜の花よ
いちめんの 菜の花よ
歌にも あるのよ
菜の花と 菜の花と 菜の花
黄色い たくさんの 菜の花が
逞しいあなたを打ち抜いて
いっせいに 騒然とする
ガリガリ!ガリガリ!きいろ!きいろ!
きいろ!
静粛に!
今 ここには わたしと あなたと 黄色い
菜の花
聞こえるか 聞こえていいのは
ただの逞しい 雷だ
さあ ワルツだ
打ち抜かれたら ワルツだ
粛々とした 土壌を踏みしめて
来年も 咲きます ように
来年も 咲きます ようにようにように
クルクル
もうね 本当は ずっとワルツ していたいの
なのはななのはな って クルクル
していたい
あなたと
どこかへ行っちゃった 雷も
泡だった 土の上で
きいろいきいろいって
会話したい
例えば 重要な 帰らなくちゃいけない 理由が あって
わたしが ただの 単なる
通過点になってしまっても
ずっと たくさんの 菜の花よ
壮絶な 菜の花よ
来年も 咲きます ように ように 
ように
クルクル
きいろいきいろい
なのはな

みんな ぜんぶ 逞しくなればいいのに
それで 菜の花になればいい
打ち抜かれたって
クルクルと していれば

粛々って
黄色いって



 



自由詩 Brassica Copyright 嘉村奈緒 2008-08-07 20:11:14
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