幸せの青い鳥
北大路京介

おにーさん おにーさん どうしたんですか?
失恋でもなさったんですか?

世界中の不幸を背負ってるような しけた面してますねぇ
そんな顔して黄昏れてたって モテないままですよ

「 海パン一丁にシルクハットの怪しいオッサンに言われたかねぇよ 」

ホッホッホォ "怪しい"は よけいじゃないですか
"海パン紳士"とでも呼んでください

「 オッサンさぁ、そのシルクハットから ハトやウサギを出してくれるのかよ? 」

いいえ この帽子は日射病対策にかぶっているだけです
ハトやウサギは出せませんが、良いものをプレゼントをしましょう


  海パン紳士は、シルクハットに何も入ってないことを男に確認させると、海水パンツの中から1羽の小鳥を取りだした。
  青い小鳥。
  ピヨピヨ。



"幸せの青い鳥"です
幸福を呼び込んでくれる素晴らしい鳥なんですよ
プレゼント フォーユー

「 これ、カラーヒヨコじゃねーの? ヒヨコにカラースプレー吹きつけちゃったやつじゃねーの? 」

ノンノン 違いますよ
かわいいでしょ?
名前は "スリーエスちゃん"
直感で名付けました

「 こんなヒヨコちゃんで幸せになれるとは思えないけど・・・ 」

ヒヨコのように見えますけど
この"スリーエスちゃん" 絶滅危惧種で天然記念物
国際条約で輸出入禁止のレアヒヨコなんですよ

「 いま、ヒヨコって言ったよね? ちらっと聞こえたんだけど 」

闇のオークションでは何十億円 いや、何百億の値がつく

「 おぉ! そんなに高く売れる の です ね  」

えぇ、そうです
私は もうじゅうぶん幸せになりました
あなたに譲って差し上げましょう

さぁ 幸せにおなりなさい

「 とりあえず貰っとく  ありがとう! 」


青い鳥は 五感のすべてを満たしてくれますよ

いつまでも聴いていたい鳴き声

癒されるそのキュートな姿

ふんわりとした優しい手触り

馨しい最高の香り

食べても美味しくて 幸せ 幸せ

「 食べねーよ! 」

フライドチキン 美味しいのに

「 え? チキン? 」

クッククック Cook Cock 青い鳥

「 だから 食べないって! 」

クックドゥードゥルドゥー クックドゥードゥルドゥー 青い鳥

「 やっぱり、これ そのうちニワトリになるんじゃねーの? 」


  男が鶏か否かの大きなハテナマークを海パン紳士に投げつけようとしたそのとき
  青い小鳥は眩い光に包まれた

  男は理科の実験で燃やしたマグネシウムリボンを ふと思い出し
  空は一瞬 真っ赤になり
  青い小鳥が 光の柱に変わったかと思うと 柱は人型へとカタチを変える


『 私は某国の王女でスーパーアイドル 悪い魔法使いにヒヨコの姿に変えられていたの 』


  男が毎晩思い浮かべていた理想の女性が 女体が
  髪、顔、目鼻立ち、スタイル、声  すべてが男にとっての"どストライク"
  男の瞳は桃色ハートマーク
  心臓も飛び出して ドックンドックン


『 クックドゥードゥルドゥーの呪文で元の姿に戻ることができたわ! ありがとう海パン紳士! 結婚して! 』

  美女は海パン紳士に抱きつき

  男は放心状態

  海パン紳士はシルクハットを深めにかぶり直し ホッホッホォと立ち去った
  腕に しっかりしがみついたダッコちゃん状態の美女とともに


  それから どれくらい時が流れただろうか

  男はケータイ電話を取りだした



「 もしもし 魔法使いさんですか  ちょっと 悪い魔法かけてもらいたいやつがいるんですけど・・・ 」





自由詩 幸せの青い鳥 Copyright 北大路京介 2008-08-04 21:15:06
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