空腹と倫理
tibet



今朝黄色いのが見えていたから
きっと今晩だろうね


猫は鋭い爪で小鳥の腹を割き
取り出した小さな心臓を庭に埋めた


食べるのも遊ぶのも同じことだよ

さっきまで一緒に遊んでいたのに食べてしまったの?

違うよ
新しい家族
今日から仲良くできるでしょ

それごはん?

ただいま
遅くなったね
ごめんね




暗い部屋から銀色に照らされた庭をじっと見つめる猫と私

月がてっぺんに登る頃には翼は完全に土から出ていた


埋める前より少し大きくなってるね

土を払うように羽をバサバサと3回ほど羽ばたかせた

とうとうつま先まで地面から出てきた



今が一番おいしいんだけどな

この子はもう食べちゃだめ




最後にクチバシで根を切ると
月に向かって飛んでいった




そろそろ寝ようか

ううん
もう少しここで月を見てる

そう言うと
猫は狭い額をガラスに押し当てて仰向きになった


自由詩 空腹と倫理 Copyright tibet 2008-08-03 11:43:57
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