真夏のエンジン
七味とうがらし

僕の車は
ハンドルを360°回転するとタイヤの向きが360°回転するんです。
ちょっとハンドルきるだけで急ハンドルになるから。
前方に、母と子の二人乗り自転車。
しつけのためか、子は荷台で正座をしておりました。
おそるおそる追い越してますから。
「そこの二人乗り止まりなさい」
キラキラとパトカーが呼んでます。
その脇で、ずんだれたジャージがノーブラでポチポチと僕を睨んでおりました。
さらに前方から、こんな細い道にバスが来てますから、
僕の車はやむをえず路肩に突っ込んでしまったのです。
バスから運転手の手が出てきて
「ごめんなさい。ありがとう」
てな感じで手をぱくぱくさせて
深々と手首でおじぎをしました
パトカーは母を逮捕
子は荷台からおりて正座
「お、
ハンドルの角度を90度にすると楽しいぞ
まるでメリーゴーランドではありませんかお母さん
お母さん」
ぼくは得意げに
子には涙がお母さん
お母さん

雪が降っていました
ボンネットが吹き飛び
エンジンに直接雪がじゅっと言い
雪がじゅっと言い
雪がじゅっと
言いました

冷たくなんてないやい


自由詩 真夏のエンジン Copyright 七味とうがらし 2008-08-01 11:02:48
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