真夜中に子供は眼を覚ます、
覚醒する、息を止める
父親も母親も
今日はもう眠りについていた
いつもはもっと遅くまで
呼吸を荒らげているというのに
しん、と耳の中でなにかが残るような気がして
時計を探したが、見つからなかった
がさこそ、と音がしたので眼を凝らしたが
窓から風が静かに入ってきただけだった
大人の時間でも、
子供の時間でもないその空間は
幼心をひどく刺激させた
誰もこの世界にいないような錯覚を、得て
真夜中に子供は眼を覚ます
あの時のわたしは酷く純粋で
そして、あやうかった
待っていたのだ
ハーメルンの笛吹きの話のように
連れて行ってはくれないかと
怖いくせに
別に不満やなにかがあるわけでもなく
ただ
子供でもなく大人でもないわたしは
未だ、酷く惹かれていることに気が付いてしまったのだ