月と夜の森
こゆり

月夜の泡沫うたかた
ひらいた辞書に
針をおとす


夜の端を
そっとめくると
月は
その裏側で
輪郭をにじませる

言の葉は
月影を背負い
蝉時雨の風と
果てない旅に出る


もう戻ってはこない


流れゆく時間が
水面に浮かび
ゆっくりと
水の底へ
眠って

照らされるのは
温度を失ったものたち
影は無言で
その所在を伝える


繰り返される


耳を澄ますと
聞こえるしらべ
銀色に包み込む
月の鼓動


自由詩 月と夜の森 Copyright こゆり 2008-07-30 21:04:55
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