ZERO POWER
キキ

やがて来る、あたらしい雨
プラットフォーム
この手で焼いた
たこやきのまるいかたち
そしてあの子のえがお

満ち足りた身体に
デザートがはいるだけの
ちょっとした空隙ができる
まだ走れるかもしれない
走れないかもしれない
プラスチックの青いイスに座りこんだ
わたしのスカートに
仔犬のかたちをした風が入りこむ

そしてあの子は気づかないけれど
わたしのスカートはいつの日も水玉じゃないのだ



 あの子が見ていたのはただの草、みどり
 葉のかたちそのままに影をなす、ふかみどり

 わたしは帽子をかぶったままで
 額にだけ汗をかいた
 あの子の腕は
 かわいたままで
 なんの匂いもしなかった
 くんくん鳴く仔犬のかたちをした陽射しが、まぶしい
 何かを探しているのはまちがいない

 まちがいない

 今日やってみたかったのは
 木陰のベンチに座り
 ひとつの本とペットボトルを分けあうこと

 仔犬じゃなくても
 わたしの甲をなめてもいいよ



わたしの足元まで
雨は、やがてたどり着く
プラットフォーム
にくらしい、が
がやがや増えて
押しだされるようにあの子は帰る
塗りなおされたばかりの列車に乗って
やがて来る
かみなりのように
ひかりの色をした残像だけをまた置いていく

からからで
何もなくて、晴天
つつがなく会えた
それだけを覚えて眠る
その夢を
知るひとがいなくても
何がなくても
わたしはいつの日もみじめじゃなかった


自由詩 ZERO POWER Copyright キキ 2004-07-20 16:21:41
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