迷い森
モリマサ公

「ここはどこなんだろう」
と苔むした薮を歩いてると、湿ってすべる。
裸足ではないが靴底にはもう穴があいていて、リストカッターたちのように深く浅くあらゆる皮膚に傷がついている。
透明の液体が世界のあちこちから湧き出る。
冷たい。なまぬるい。飲めないそれぞれのコップをみたし、手首をひたす。
橋がのびていく。新しい。
ワンリッターテンリッターを飲み干す感覚がすでになつかしく、ビルたちの群れの隙間を、脂肪色した雲が流れていく。
虹が幾重にも重なり霧もやの高速をヘッドランプが照らし、時間のようにあたしが流れていく。
「インフォメーション」とかかれた看板、に夏祭りや花火大会のことが書いてある。
「ノーティスボード」にはりだされた幼い家族の写真。
みんなどこにむかっているんだろう。
不安だ。
知らなかった。葉っぱの裏側がこんなに暗いことも、全てを照らす太陽の黒点が、終点のように人々を吸い込む。
ゲリラの沈む泥にシャッターを切りながらリアルということについて切り取る仕事について祈っていたことを忘れない。
なぜ迷っているのだろう。
同じ場所をくりかえしチェックする。
公園で遊ぶ子供たちの走る音がそらみみで追い抜かしていく。
猫はかえってこない。
てゆーかあたしのかえる場所はどこ?
もつれている。電線や電波。悲しいほどぎゅうぎゅうな電車。
赤ん坊が生まれるたびに世界中の公園の街頭が瞬間ひかりかがやき、遠く離れたところの星たちは暗く、曲がり角を曲がるたびに木の数が増え、つたがからまる。

なぜ迷っているのだろう。





















自由詩 迷い森 Copyright モリマサ公 2008-07-22 23:08:29
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