ピエロ
いすず

吹き抜ける風のなか
あなたの声がする
もう、どうしてもつかまらない過去のなか
あなたの笑いさざめく声
いつしか、あの高みにまで飛べるまで
待っていてくれた、あのなつかしい声

時がながれてゆくね
あの空の青さが 壊れるようだね
でも、誰も何もいいはしなかったね

この手でこわすしあわせも
この手でにぎりしめる命も
同等ならば
生きるほうに賭けられないわたしは
あなたとちがう
敗北者なのでしょうか

ここ、東海のおだやかな日々には
はぐくむものもおだやかで
あなたと生きた日々を
わすれていきそうです

命のほとばしりのように生きた日々
あのかけらが まだ うずくようです
わすれかけた 青春の
幕が下りても
わたしはその幕の前の ひとりのピエロでしょう

かなしみにくれた昨日も
明日の見えない未来も
この手のなか
ずっとずっと、あたためている
あなたが生きたあかしが
この胸のなか 息づいてる
だから、わたしは問うの

わたしは生きていていいでしょうか
わたしだけのピエロ
たとえ、鮮烈に散るだけでも

たとえ、鮮烈に散るだけの命でも



自由詩 ピエロ Copyright いすず 2008-07-22 22:22:37
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