数
たもつ
羊とシーソー遊びをすると
いつも重い方が沈みました
両方が沈まないでいるのは
とても難しいことでした
わたしはまだ
言葉をよく知らなかったのです
+
眠れないときは羊を数えなさい
そう教えてくれた母は
羊飼いに恋をして
家を出て行きました
あとにはわたしと
海賊をしていた父が残されました
+
父は略奪も人身売買も忘れて
眠れないときは二人で
羊を数えました
それはどちらかが眠くなるまで続き
終わることはありませんでした
+
ある日父は
暗くて寒い海に身投げしましたが
わたしは人気のないベランダで
取り込まれることのない洗濯物をみながら
羊を数えていました
数はとっくに羊からも
溢れていました