だいだいの中を
月見里司

かたむいた町で
雨が上がった
置いたままにした眼鏡は
片方曇っている

路地は揺れている
西日が真っすぐ射して
どの鳥も
からすに見える

門柱には
チョークで落書きがしてある
穴の空いた生垣を
見下ろしてほほえむ

モニュメントは動かない
遠ざかる自分のことを
見てはいるが
手を振り上げた姿のまま

公園を通り過ぎる
煙突の影の先端で
立ち止まろうとして
やめる


//2008年7月19日


自由詩 だいだいの中を Copyright 月見里司 2008-07-19 11:40:44
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