from lim shin
あすくれかおす


声そのものを
水にひたしたように
力を与えたい
私の届ける力
いつまで音は続いてゆくのだろう

車輪の這うところを地図にして
他の景色は見ないで
暮らすということは涙
こぼすということは月日



砂利の音 
響く中庭
歩く人 
それぞれが ひとことずつ持ってくる

名前は何にする?
リリィ、それって花の?
好きだから、続けている?
やめなよ、すべてに情がうつるから


つながらない延長コード
デスクスタンドくすくす笑い
指一本分のポケットに 一行分の付箋の束
お、ま、じ、な、り、
き、み、に、も
、か、け、、て、
、、夢


大きなクマの背に乗って
少女は花摘みに出かけました
まだ紫陽花はいたのね
忘れてしまった緑の雨ぎわに

忘れてしまった?
ほら思い出して
野良猫の宇宙や
借りてきた漫画本のこと
花摘みに出かけたのはどこの娘だったろう
リリィ探しに出かけた人は

あなたにも
きっと意味のない夜がくる
できやしないのだ
誰もが誰もを
せせら笑うことなんか
人生を通して
ひたすら盗んできたものを
背負いきれなくなってはいないか


土の匂いがそばまできている
きれいな夜だ
あか あお きいろ 
23時 全ての空を泳げ
熱帯夜をひとりぼっちにしてはいけない


響きを水にひたして
やっぱり力をかえしたい
全部全部
忘れて乾いて
元のわかめに戻したい


(ベランダに座って
眼鏡の大群が
泳いだりはしない
その普通さに
みとれるあなた)


そうだ
キィコ
キィコにしよう
コーヒーミルの
新しい名前




 



自由詩 from lim shin Copyright あすくれかおす 2008-07-17 22:02:33
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