「ゆれる (教室に咲いた花)」
ベンジャミン

春にまいた種が
いつのまにかもう
つぼみをつけていたことに

気づいていなかった

「先生と会えるのは今日が最後なんだよ」と
ひとりの生徒が言ってきた

本当は
知っていた

けれど知らないふりをした

春から夏に季節が移るように
流れてゆく何かを止めるほどの
僕はそんな立派な言葉を知らない

「受験、頑張れよ」って
なんてありきたりなセリフだろう

本当は
ずっと考えていた

その生徒がいなくなると知ってから
その生徒に僕はどれだけのことを
その生徒に僕は何ができたかを


  ※


春にまいた種が
つぼみをつけていた
それはとても自然な営みだ

もうじき咲く
そう信じるしかない

生徒の後姿が
だんだんと遠ざかる

教室の窓辺には
きっともうじき咲く花が

風もないのにゆれている




ゆれている
  
   


自由詩 「ゆれる (教室に咲いた花)」 Copyright ベンジャミン 2008-07-15 02:05:59
notebook Home 戻る