コインロッカー
RT

ルール
受付にて、鍵を受け取る
駅までの交通費はお客様負担
駅のコインロッカーを開け、自由に閲覧してよい
それを取り出し、手に取ってもよい
取り出した場合は、一駅のみ移動してもよい
(その際、移動先の駅を報告のこと)
(破損しないよう、両手で抱えて移動のこと)
閲覧後、別の(或いは元の)コインロッカーにそれを預ける
(ロッカー代はお客様負担、サイズ金額自由)
終了次第、速やかに受付に鍵を渡す
閲覧料はお客様の感じた価値により自由

さて
コインロッカーには
赤ん坊を捨てる者あり
納骨堂代わりに使う者あり
人生の縮図と申すよりは
人生そのものを預けているという
たった数枚のコインで
人生とはいつのまに
こんなに安くなってしまったのでしょうね

閲覧料は
一目千両という昔話もございますが
恐ろしいことに
大枚はたいて行くものばかり
看板も掲げていないのに
口コミでいらっしゃるお客様が後を絶たない
私はこうして受付に座っているだけで
計り知れない現金を
ありがたやありがたやと拝まれながら
毎日受け取っているという算段で
そんな生活を送っているものだから
お金なんぞにはもう興味がないのですよ

そんな貴重な物を
駅のコインロッカーに預けて
お客様が持ち逃げする心配はないのかって
はあ、よく言われます

それで形ばかりですが
質として、お客様の
「いちばん大切なもの」を
受付横にあるコインロッカーに預けて行ってもらっているんですよ
もちろん鍵は預けていってもらい
閲覧後の鍵と引き換えです

はい、そうです
お金に興味がなくなった今となっては
人様にとっていったい何が
「いちばん大切なもの」なのか
覗き見ることだけが楽しみなのです

お客様が帰ってこないうちに
気付かれぬよう
こっそりロッカーに鍵を差し込むスリルは
たまりません




ポエニーク内 即興ゴルコンダより
(2008/07/06(Sun) 14:55:43)


自由詩 コインロッカー Copyright RT 2008-07-07 16:01:40
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