ハンバーグの誘惑
服部 剛
家の近所のファミレスで
ずーっと本を読んでいた
顔を上げるといつのまに
店の外の世はふけて
店内に客はぎっしり
がやがやと賑わっていた
テーブルの間を
小走りする
幾人かの店員達
そういえば
頼んだハンバーグステーキが
いつまでたっても来やしない
向かいのテーブルの空席は
食後の皿が散乱してる
小汗を流す店員の青年は
「お待たせしましたぁ〜」と
テーブルに鉄板を置いた
さぁ食べようと思ったら
ナイフもフォークも置いてない
(おぃおぃお願いしますよ)と
いちゃもんつけてくなってもみたが
小汗を流し
テーブルの間を小走る青年が
なんだか日頃の自分に思え
小言いう気も失せました
あぁ眼下には
鉄板の上に置かれた
焼きたてのハンバーグが
やけに嬉しそうに
じゅうじゅう何かをいってます