雲間
木立 悟





内に向かって壊れた胸から
水がわずかに滲み出している
うすい陽の声
穴の数の息


草が逆に波打つ
濡れた色になる
夜の風のなか
渇いた音のなか渇きを疑う


布に爪を立てた日に
筆を幾度も折った日に
それとは知らず
雨を呼んだ


髪に額に
目に頬に
見えない滴がひとつ置かれ
微動だにせず
微動している


一度だけ巨きく響くもの
渦まくものの行方
音に揉みしだかれる音
ただ一度だけのもの


忘れ去られ 思い出される
消えるのではなく 重なってゆく
見えないものは鳴りつづけている
見えなくなりつつ 震えはじめる


雨と火と七
ふと閉ざされて
指の影の声
雲間を見ていた


ひとつの葉に話しかけられ
ここまで来たこと ここに居ること
水の点が 道を覆う
目を閉じても 覆いつづける
道が消えても 覆いつづける



















自由詩 雲間 Copyright 木立 悟 2008-07-05 15:12:38
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