空中ブランコ
銀猫


誰も気付いていない
扁平な空と屋根の間に
ブランコがある
そこには
飛行機で行けないが
羽根をばたつかせても
到底届く高さではなく
梅雨にぬかるんだ地表と
レーダーに映る雨雲の間にあって
透明に近く色を失ったり
光線を含みすぎて、
安い鏡のように歪んだりもする
小鳥の囀りとか
天使の寓話とか
もはやそんな化粧はせず
ただ
憂鬱の鬱、と言う文字を
きちんと覚えている人が
思いのほか大勢いるように
そこ此処に
ごく普通の風情で
ぷらん、と宙にぶら下がっているのだ
いったい何のためにあるのか
そんな疑問は無粋というもの
誰もが知らぬ素振りだが
何処かに切れ目の出来かけた空と
浮き足立った人間たちの
歩み寄りの手段として
空中ブランコは
発生したのかも知れない
そこで
ふーり ふーり
足を前後に揺さぶって
あした地球が救われないかなんて考えてみる
科学者たちも正義の味方も
このブランコは漕がなかった
ふーり ふーり
ふーれ ふーれ
ブランコ揺れて
そらいろ揺れる
風が吹いたらしがみつき
豆の木の葉が届くまで
ここで続ける、
ふーり ふーり
ここより高くに行きたいか
それとも地上に降り立つか
ゆーり ゆーり
ゆーれ ゆーれ
決めかねている
のさ





自由詩 空中ブランコ Copyright 銀猫 2008-07-04 23:35:31
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