逆流
知恵

僕が剃刀を初めて手にしたのは21歳の冬だった


誰もが気分よく新しい年を迎えるために
まとめの仕事や勉強に取りかかり
街のイルミネーションはそんな人々を励ましているかのようだった

そんな寒さに体を震わせて足早に人々が帰路に着く季節

僕は初めて手首を赤く染めた

迫りくる衝動と行き場のない気持ち

誰にも話せないから自分の体に刻みこみ、苦しさを自身で確認した

毎日を笑顔で過ごす人々の社会の波に乗れなくて
乗る必要性も感じることができなかった


あの頃と今、何一つ変わってはいない

僕は今、こんなにも生に逆行しながら生きている


自由詩 逆流 Copyright 知恵 2008-07-04 21:04:23
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