生乾き
木屋 亞万

この頃はどうも選択物が乾かないので困る
心の窓辺、カーテンレールに
外に出せないでいる選択物がずらり

じめじめと蒸し暑い室内で
頭脳が知恵熱を出しながら文字を打つ
――愛してる好きです付き合って下さい
ストレートなジーンズの裾は生乾き
ジリジリと燃えるようにフローリング
――手を繋ごう笑ってほしい側にいて
油に湿ったフレアスカート、燃えて

窓辺で舌が乾いていく
喉までからからとしてきて
言葉が外まで届かない

カーテンを開けているのに
光が少ないのは外が雨だから
カーテンレールに洗濯物ぶらさげて

意外と近くにいる気がするのに
僕は君に名前さえ聞けないでいる
汗の充満した部屋から抜け出し
雨の中だって走るさ
大きめの傘さして
恋文が濡れたって構わない
文字がにじんでも関係ない
口が代わりに伝えるさ
心の窓は割って来たもの


自由詩 生乾き Copyright 木屋 亞万 2008-07-03 21:50:33
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象徴は雨