化学
たもつ

 
白地図に雪が降り積もる
数える僕の手は
色のない犬になる
古い電解質の父が
真新しい元素記号を生成している間に
妹は今日はじめて
言葉を書いた
それを言葉だと信じて疑わないので
僕は薄い溶液に嗚咽しながら
ひとつひとつ添削をして
あきらめていく
幅広の机から化学が溢れ出して
その向こう、暖かな場所では
母が微笑みを絶やすことなく
世界を切り刻んでる
 


自由詩 化学 Copyright たもつ 2008-07-03 17:26:09
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