蜃気楼の街
服部 剛

旅先の友を訪ねた 
帰りの列車のシートを倒し 
ポケットに忍ばせた 
ウイスキーの小瓶を一口 

喉が焼ける一瞬、
の後に 

聞こえて来るのは 
我胸に とくん とくん と響く 
孤独の音 

頬は赤らみ 
車窓の外の山々を 
埋め尽くして立ち並ぶ  
緑の木々に 
人の顔々が 
浮かび上がる 

いくつものトンネルの闇を抜けて 
山間やまあいを流れる川と同じ方角へ 
列車は都会へと走る 

( 一輪の薔薇に逢いにゆこう 
( 一方通行の線路の上を僕は  
( 行方知らずに疾走して 

遥か昔に山々を 
遠く離れた木々達は 
人間達へと化身して  
今日も見つからぬ 愛 を探し 
「 都会の森 」を彷徨う 

遠くに立ち並ぶにビル群に向かって
山間を緩やかに伸びる線路の先は、 
突き刺さる。 


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自由詩 蜃気楼の街 Copyright 服部 剛 2008-07-01 00:16:23
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