芳一
敷彦

 内密のことですが
 内密のことですが
 内密のことですが
 昨年以来の
 溝の隙間より
 貴方でもなければ私でもなく
 吹きつけるも意味はなさない
 これは何の音ですか
 あーあ
 聞こえてしまっている

 あまり他所さまにこのように
 申し上げてもせんのない
 わたくしごととは知りながら
 縮小の止まぬ
 洞の深みより
 不慣れな小花の刺繍の入った 
 支柱を抜かれて倒壊しきりの
 これは何の音ですか
 あーあ
 聞こえてしまっている

 聞こえてしまっておりますよ
 歴戦不敗の経文の
 耳朶のうらたぶ
 忘れおってからに本当にもう

 それは
 うちのチワワの声だワン
 うちのアメショの声だニャン
 蛇足がとぐろを巻いて
 音

 聞こえますか
 入ってますか
 お耳に届いておりますか
 彼岸の北の
 淵の裏
 洗いざらしの香りがする
 柔らかな赤毛が流れ出る 
 これは何の音でしょう
 あーあ
 聞こえてしまっている


自由詩 芳一 Copyright 敷彦 2008-06-27 22:04:20
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