何処にでもある窓
A道化




ある窓があって
その窓は生まれつき北向きなのに、あちら側では
目を開いたまま湛えられた池の水面が光になり
崩れそうに傾きながら何かを守る強い屋根瓦が光になり
駐車場に並ぶ誰もいないフロントガラスが光になり
余りの光に誰かの目は苦しい
余りの夏に誰かの呼吸器は悲しい


ある窓があって
日陰しか知らない振りを決心したその窓のこちら側にも
そんな風に、あらゆる輪郭を手段として光は照り込み
そして、あらゆる光を手段として夏は満ち
余りの光に誰かの目は苦しい
余りの夏に誰かが呼吸器は悲しい
そんな窓が何処にでもあって


嗚呼、余りの光、余りの夏
それでもある窓のこちら側では
照らされた何処かのレントゲン写真に今も雪が降り続く
今も何処かに、真っ白い、真っ白い雪が降り続く
ある窓があって、ある窓があって
ある窓が、何処にでもあって



2004.7.15.


自由詩 何処にでもある窓 Copyright A道化 2004-07-16 05:42:45
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