サンサーラ
あすくれかおす





それいゆは 金ぴかの花をにぎったまま

道草 食べて暮らせば  どこにもたどり着かないで済むと言った

それを言うは 他にはもはやだれもいなくなった

世界は枯れてしまったんだ 金ぴかをひとつのこしたまま


わたしの名前は サスピシャス

世界は枯れてしまったから名前には意味が無くなった

生暖かい風

この世の常温が わたしの身体を融かしてゆく心地がする

「汝ぐらぐらの視界を愛せよ」と仰る

わたしだけの神さんは いつも適当だ


それいゆは金ぴかの花を

愛そうとも 捨て去ろうともしなかった

手放した瞬間に消えていく

そんなイメージだけを繰り返して想っていた

わたしは金ぴかの花が

消えていけばいいとも 消えないでほしいとも思った

とにかく自分自身が知りたかった



どうして世界は

かんぺきに無に還ることをせず

わたしたちを絶やすこともせず

ただ枯れてしまったんだろう

わたしたちに何を教え

何を奪いたかったのだろう

無意味よりも無でよかったし

「どこか」に行くことも  別に拒むつもりもない

なのにどうして世界は

ただ枯れてしまったんだろう



それいゆは言った


ねえサスピシャス

われわれは今 何か大きなもんだいにぶちあたったようでいて

実は ずっとずっと前から「この時間」は続いていたのかもしれないよ

いや 時間とさえ呼べないものかもしれない

ぼくが金ぴかの花を握っているという現実は

それ自体にやはり意味はない気がするけれど

ずっと続いてる「この時間」にとっての

ひとつの道しるべなんじゃないかな




世界が無にならないこと

それいゆとわたしサスピシャスがいること

金ぴかの花

「この時間」と「どこか」

これらの少ないキーワードが結び合わさってできる宇宙があるとすれば

そこに自分自身があるのかもしれない


形在る限り 歩まねばならない

わたしは知りたい

知っていきたい

何気なくたどった道を

思いそらんじて帰るように

気まぐれに歩いても

明日へ続くように












自由詩 サンサーラ Copyright あすくれかおす 2008-06-27 00:32:16
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