ドロップバニッシュ
秋也

ゆっくりと回転する火の輪が
時間を飲みこみ
星を凌駕し
空間を閉じ込める
彼は絶えず動き
絶対的であることを畏れ
凍えた完全停止を頭にチラつかせる
輪の中を焼かれながら這いずる
トカゲたち
輪の外で鱗紛を炎で焦がしながら
それでも飛ぶ億万匹の蝶たち
お前たちは野生そのものなのだから
生きればいい
美しさとは
這いずることでも
飛ぶことでも
停まることでもない
寄りそうことだ
それならば
火の輪の中で三匹のトカゲが一斉に舌を出し
ただ一匹の蝶を狙う
今がその時であり
それならば
私も火の輪の回転に寄りそい
醜くも生きるとしよう
誰もが凍ることに憬れ続け
彼の畏れを静かに感じ
彼に溶けていく
闇は深く流れるように灯る
それは寄りそうことでもあり
彼を輪として
火として
大きな拒絶ともなる
物事は生まれたならば
動き
やがて
停まり
そこで寄りそえる
回転をする火の輪に涙を落とす準備はできたか
ゆっくりと
いつだってトカゲたちは口を開けて
涙を待ちくたびれているから
五百三十二と半匹の蝶が
大きな塊となり
新しい何かとなる
時間と空間
そして小さな星を体に含んで


自由詩 ドロップバニッシュ Copyright 秋也 2008-06-26 22:59:29
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